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落語パフォーマーとして活動をはじめた頃からフランスでどうやって落語のことをたくさんの人に知ってもらえるのかと考えましたが、やはりマンガを翻訳すればいいのではと。シンプルな発想ですが(笑)、そもそも落語をテーマにしたマンガはあるのかと。
最初に見つけたのは、尾瀬あきら先生の「どうらく息子」(小学館)です。
小学校の先生に勤める主人公SHOTAは、落語の世界と無関係。ある日、SEKISHUNTEI DORAKUという師匠の高座を見て、落語に「一目惚れ」。小学校の仕事をやめ、DORAKU師匠のところに弟子入りを決める。
さあ、SHOTAは厳しい修行をはじめ、いつか真打になるのか。
これは「どうらく息子」の大まかな筋ですが、前座の修行、楽屋での仕事、後輩・先輩(兄弟子・弟弟子)の関係など、落語会のことが細かく描いてあります。
落語のことが全くわからない方(特にフランス人)にはたくさんの情報があるため大変勉強になるドキュメンタリーっぽい作品です。さらに、たくさんの古典落語も描いてありますので、演目も楽しめるわけで、2回続けて飽きないマンガです。
残念ながら、今、フランス語の出版は中断となっています。
一方、落語のマンガで、もう一つ気になっていたのは雲田はるこ先生の「昭和元禄落語心中」(講談社)です。
この作品は大ヒットですね。2013年は文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、2014年は講談社漫画賞、2017年は手塚治虫文化賞などを受賞。
また、2016年にアニメ化となり、その後、ドラマにもなりました。
今回、マンガのフランス語版がLe Lézard Noir(ブラック・リザード)(*)というところから出ますが、数年前にフランス語字幕付き日本アニメ専門ストリーミング・チャンネルA.D.N.(アニメ・デジタル・ネットワーク)で紹介されて、結構ヒットもしました。最近、フランスで落語公演を開催すると、お客様も増えていて、やはり「アニメをみたから」という声が多い。
「昭和元禄落語心中」は「どうらく息子」と違って、あんまり「ドキュメンタリー」な部分はありませんが、戦後の日本の描写や登場人物同士のドラマチックな関係などは魅力的で、フランスのオーディエンスをすでに虜にしています。
このたび、フランス語の「紙」バージョンで落語認知がもっと広がるといいですね。
(*)Le Lézard Noir出版は日本の様々なマンガを出しています。
その中、フランスでもヒットしたのは「深夜食堂」です。
「昭和元禄落語心中」Le Rakugo, à la vie, à la mort – 2021年8月19日(木)OUT
https://lezardnoir.com/